OSHMSって結局何?3つのポイントで分かりやすく解説します

OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)とは?

組織の安全衛生担当者や、安全衛生関連の資格(労働安全・衛生コンサルタント、衛生管理者など)を目指す方にとって、必ず触れることになるのが OSHMS(Occupational Safety and Health Management System) です。
しかし「解説を読んでもイマイチわかりにくい…」と感じる方も少なくありません。
当会blogでも、OSHMSの記事はややアクセス数が多く、解説の需要は高いと思われます。

そこで今回は、OSHMSをできるだけわかりやすく、かつ筆者の解釈も交えながら 解説していきます。
中規模事業所をはじめとする多くの企業で、これから導入や運用を検討する際の参考にしていただければ幸いです。


OSHMS導入で労働災害はどれくらい減る?

厚生労働省が平成 16 年に実施した「大規模製造業事業場における安全管理に係る自主点検結果」によると、
OSHMSを導入した事業所は災害発生率が約3割減る というデータがあります。
また、労働災害やヒヤリハットが減少した事業所の割合を見ると、規模が小さな事業所ほどその効果が大きい という報告も。
当学会の対象とする中規模事業所において、まさに導入効果の恩恵を受ける可能性が高いと言えます。

▲OSHMSで災害発生率が3割減る。

▲OSHMS導入による効果。小規模事業所ほど労働災害やヒヤリハットの減少量が多い。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/msh24jirei1_all.pdf

「人(個人のノウハウ)に頼りがちな安全衛生管理を、システムとして回すことで災害を減らしていこう」という考え方がOSHMSの基本です。ですので、システム化が発展途上な施設こそ向いているのかもしれません。


OSHMSを理解する3つのポイント

以下の図はOSHMSの説明でよく見る図です。

この図がやや複雑なところが、OSHMSの分かりにくいポイントかもしれません。

この記事では、執筆者の私見は入りますが、OSHMSを理解する3つのポイントを説明します。

OSHMSを理解する3つのポイント

それは、

  • 自主性
  • PDCAサイクル
  • 客観性

です。一つ一つみていきましょう。

1. 自主性

  • 外注ではなく自分たちで取り組む姿勢 が基本です。
  • トップ(経営陣)によるキックオフと、労働者の意見をしっかり取り入れる ことで、「自社が主体的に取り組んでいる」という意識を全員で共有します。

2. PDCAサイクル

  • Plan(計画) → Do(実行) → Check(評価) → Action(改善) を繰り返すプロセスです。
  • これにより、安全衛生管理を継続的にブラッシュアップ していくことが可能です。

3. 客観性

  • 「なんとなく」や「経験と勘」だけに頼らないために、記録や明文化、具体的な目標設定 を行い、客観性を確保します。
  • 手順や方法が整理され、誰が見ても同じレベルで実践できる体制 をつくるのが重要です。

具体的方法

具体的方法については以前記事でも解説しましたが、例えば、以下のようなかたちです。これも3つのポイントにしぼるとわかりやすいでしょう。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/ms_system.pdf

1. 自主性

  • トップによる導入宣言
    • 経営者が「OSHMSを導入する」という方針を明確に示し、全員参加で進める姿勢をつくる。
  • 現場の声を取り入れる仕組み
    • 労働者が主体的に安全衛生活動に関わるために、意見交換や情報共有の体制を整備する。
  • 担当部署・人材の明確化
    • 自主的に動ける組織体制を築くため、中心となる部署や担当者を決め、彼らがリーダーシップを発揮できる環境を用意する。

ポイント: 「経営者の強い意思表明+現場主導」が不可欠です。属人的なノウハウを組織として活かし、全員参加で推進することがOSHMSの根幹となります。


2. PDCAサイクル

OSHMSを円滑に運用するためには、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善) の流れを回すことが重要です。

  1. Plan(計画)
    • 現状把握: 自社・事業所における安全衛生管理の規程や運用の実態を棚卸しし、課題を洗い出す。
    • 目標・計画の策定: 事故発生率やヒヤリハット件数など、具体的な数値目標・改善目標を設定する。
  2. Do(実行)
    • 構築・整備: 手順書や記録様式を整え、実際に運用をスタート。教育・訓練を行い、新しい仕組みを定着させる。
  3. Check(評価)
    • 点検や監査の実施: 定期的にモニタリングを行い、計画通りに進んでいるかを確認する。
    • 実績比較: 目標に対してどの程度達成しているか、進捗や成果を振り返る。
  4. Action(改善)
    • 問題点の抽出・再計画への反映: 評価結果を踏まえ、足りない部分を補強し、次の計画に活かす。
    • 継続的な見直し: PDCAサイクルを回しながらスパイラルアップを図る。

ポイント: 一度決めたルールや計画に満足せず、「改善の余地はないか」を常に意識して取り組むことで、OSHMSは生きた仕組みとして定着していきます。


3. 客観性

  • 文書化・明文化の徹底
    • 口頭での指示や属人的な判断に頼らず、ルールや手順を明文化し、誰が見てもわかる形にする。
  • 具体的な数値目標・指標の設定
    • 労働災害の件数、ヒヤリハット報告数、教育訓練の実施回数など、客観的に評価できる指標を用意する。
  • 記録の保存・活用
    • 監査記録や点検結果を蓄積し、後から検証や振り返りができるようにする。

ポイント: 「なんとなくやっている」から脱却し、誰が担当しても同じ基準で管理できる仕組みをつくることが大切です。客観的な記録やデータがあることで、問題解決や組織的な改善がスムーズに進みます。


事例紹介

下記は厚生労働省の資料(OSHMS導入事例集 PDF)から抜粋した事例をベースにしたものです。従業員数は約110~119名という中規模事業所ですが、すでにISO14001を取得しているなど、環境マネジメントにも積極的な企業です。

(1) 事業場概要

  1. 所在地:愛知県
  2. 従業員数:約110~119名
  3. 業種:化学工業
  4. 事業内容:リサイクル事業

(2) OSHMS導入の背景・経緯

  • 当該事業所は自動車メーカーのグループ会社の関連企業で、グループ内のコンサルティング会社からも働きかけがあった。
  • 2000年にISO14001を取得後、2001年にOSHMSのキックオフを開始。2004年にコンサル会社による支援を受けることを正式に決定。
  • 毎年1件ほど労働災害が発生していたため、対策を講じたいという思いと、コンサル会社のタイミングが重なった。

コンサルを導入しつつも自社で行うことにより客観的な視点を保ったまま「主体性」を確保できます

(3) OSHMSの組織・体制

  • 協力会社 に対しても安全衛生委員会の議事録を周知し、関連部署を中心に教育を実施している。
  • 社長が統括安全衛生管理者、専務取締役が総括安全衛生管理者代理(副)に選任され、自主的な安全衛生管理の体制を整備。
  • 各グループに「安全衛生推進リーダー」「安全衛生推進員」を配置し、活動を推進。
  • 担当者は3年ほど前に着任したメンバーなどが中心となっており、人材育成として外部機関の講習会なども活用している。

全社的な取り組み(主体性)、そして安全推進担当者をおくなど人員のシステム化。

(4) 導入にあたり苦労した点

  • 導入当時は、書類作成 にもっとも時間と手間を要した。
  • 安全衛生推進計画作りの際、トップのレビューで修正が入り、何度か手戻りが生じるなど苦労もあった。
  • ただし、ISO14001の認証取得を経験済みだったため、システム導入の流れ自体には比較的スムーズに対応できた。

「客観性」の確保やPDCAサイクルに少し手間がかかります

(5) OSHMS導入の効果

  • 周知徹底がうまくいっている
    • 従業員が110名前後のため、トップからの意向が現場の一般作業者へ行き渡るまで時間が掛からず、素早い意思疎通が実現している。
  • 安全衛生に関するノウハウが継承
    • システムを回すことで、今まで属人的になりがちだった安全衛生の知見が組織的に蓄積・共有されるようになった。
  • 安全意識の変化
    • 従業員一人ひとりが安全を意識するようになり、「OSHMSなしの安全管理は考えられない」というほど定着している。
  • 「やって良かった」という実感
    • 労働災害が減少し、ヒヤリハット件数のモニタリングもしやすくなった。結果として経営側も「導入は正解だった」と感じている。

「客観性」「PDCAサイクル」により属人性が解消されかつ「主体性」により社員全体が自分事としてとらえられるようになりました

(6) 今後の課題

  • マンネリ化への懸念
    • 一通りシステムが整い、安全衛生活動が「当たり前」となってきたことで、逆に形骸化してしまわないかを危惧している。
  • 更新審査をどうするか
    • 認定更新審査は3年ごとに費用が掛かるため、「これだけうまく運用できているなら、わざわざ更新審査を受けなくても良いのでは?」という意見が社内にある。
    • 外部認定を維持する意義(第三者からの監査や客観評価による改善)とのバランスをどう取るかが今後の検討ポイント。

マンネリ化や継続のためにPDCAサイクルを回し続けることが大事です

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/msh24jirei1_all.pdf

いかがでしょうか。覚えることの多いOSHMSも3つの要素に絞るとすっきりしますね。

記事後半はOSHMSの運用に関する役立つトピックをいくつか紹介します。

OSHMS指針改正のポイント

厚生労働省のOSHMS指針は必要に応じて見直し・改正が行われています。主な改正ポイントは以下のとおりです。

  1. 複数の事業場を一の単位とした運用
    → 事業所ごとにバラバラではなく、グループとして統一した仕組みをつくることを想定。
  2. 幅広い業種での導入・運用を明示
    → 製造業だけでなく、サービス業や医療・福祉など、多岐にわたって適用が可能。
  3. 化学物質リスクアセスメントの実施
    → 化学物質取扱いがある事業所では、リスクアセスメントは必須。
  4. 健康の保持増進のための活動の実施
    → 安全だけでなく、労働者の健康保持増進 にも注目する流れ。

ISO 45001との関係:JIS Q 45100とは?

国際標準のISO 45001 では、労働安全衛生を世界基準でマネジメントする枠組みが示されています。一方、日本国内では独自に進めてきた安全衛生管理の文化や活動も存在します。
その両方を両立させるため、JIS Q 45100(2018年9月制定)という規格が作成されました。

  • JIS Q 45100 = ISO(JIS Q)45001 + 厚生労働省のOSHMS指針
  • つまり、JIS Q 45100を運用すれば、国際的なISO規格日本のOSHMS指針 を両立して適用できるというわけです。
  • グローバル企業や海外取引のある組織にとっては、ISOへの対応 と同時に 日本の法規・指針への適合 を担保できるメリットがあります。

支援サービスや講習会も活用しよう

一般社団法人中災防(中央労働災害防止協会)などの団体では、企業向けの講習会導入支援サービス を行っています。
特に、人数や専門人材が限られる中小企業や嘱託産業医の先生などが「一人でゼロから取り組むのは不安…」という場合、ぜひこうした外部の力を借りると効率的です。

中災防公式HP・OSHMS紹介


人からシステムへの転換が重要

数字(目標値や記録)ばかり追いかけすぎて、現場の実情・安全文化の醸成がおろそかになるのは避けるべきです。
しかし、中小規模の企業が今後大きく成長していくためには、「人に依存したやり方」から「システムで回す方法」への転換が欠かせない ことも事実。

OSHMSは、その具体的なステップを示してくれる強力なフレームワークです。
既に導入している企業だけでなく、「これから本格的に安全衛生管理を整えていきたい」「安全と健康の水準をもう一段引き上げたい」と考えている企業や事業所にとって、非常に有効な仕組み となるでしょう。


以下の資料に3例の事例が紹介されています。参考にどうぞ。

まとめ

  • OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム) は、組織全体で災害を防止し、安全衛生水準を高めるシステム。
  • 自主性・PDCAサイクル・客観性 の3つが柱。
  • 導入すると災害発生率が3割減 になるとのデータもある。
  • 日本独自の安全衛生活動と国際基準(ISO 45001)を合わせた JIS Q 45100 により、両立・運用が可能。
  • 中災防などの支援サービスを活用することでスムーズな導入が期待できる。
  • 中小規模の企業こそ大きな効果 が見込まれ、「人からシステムへ」の転換が成長のカギとなる。

「属人的にやっていた安全衛生管理」を卒業し、組織ぐるみで安全文化を根付かせるために。
ぜひこの機会に、OSHMSの導入・活用 を検討してみてください。

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