エムスリーキャリア社に関する記事への開示請求について
こんにちは、日本嘱託産業医学会です。
本日は、2025年6月28日に公開した以下の記事について、大変重要な動きがありましたのでご報告いたします。
該当記事:
https://jseo.jp/2025/06/28/m3career-margin-abuse/
この記事に対し、最所弁護士を代理人とする相手方より、プロバイダに対する発信者情報開示請求が東京地裁に申し立てられました。(相手方企業名は未開示です)
申立内容
開示請求の内容
申立書によると、主張されている主なポイントは以下の通りです。
【申立代理人】
最所弁護士
【侵害されたとする権利】
- 名誉毀損
- 営業権の侵害
【問題とされた記述】
- 産業医の報酬が相場を大きく下回り、搾取的であること(報酬4,000円・抜き率90%)
- フルリモートによる産業医業務が労働安全衛生法に違反する懸念があること
- 企業に対して詐欺的行為と評価され得る構造があること
- 「人材紹介」の名目で報酬の87%を抜き取るモデルが搾取的であること
これらの事実の摘示が、申立人の社会的評価を低下させたと主張されています。
追記:なお、M3C社が偽装請負の可能性がありトライアル勤務がその可能性をより強めること、M3C社に産業医がおらず産業医業務に関与する立場にないことなどは指摘無くM3Cも事実として認めたと考えられます
名誉毀損・営業権侵害の主張についての当会の見解
今回、相手方より名誉毀損および営業権の侵害を理由に発信者情報開示請求がなされたことについて、当会は次のように見解を述べます。
名誉棄損について
まず、名誉毀損にあたるか否かについては、以下の3要件を満たす場合、不成立とされます。
- 公共の利害に関する事実であること(公共性)
- 公益を図る目的であること(公益目的)
- 真実であると信じるに足る相当の理由、もしくは真実性の証明があること(真実性)
当会は、該当記事がこのすべての要件を満たしていると確信しています。
公共・公益性について
業界において、先人が築き上げた産業医制度をダンピングのために形骸化させる行為や、産業医という高度な専門職に対してマージン搾取のために偽装契約を結ぶ行為について指摘することは、労働者の健康や企業の安全配慮義務にも直結する公共的な課題です。これは、単なる一民間企業への批判にとどまらず、国民の労働安全と医療制度の信頼性に関わる本質的問題であると考えています。
真実性について
また、「真実性」についても、当会は以下の通り強い自信を持っております。当該記事の記述は、具体的な契約条件、報酬体系、請負構造、業務実態などに基づいています。これは、匿名の噂話や憶測によるものではなく、実際に関係者から得た一次情報や契約書面に裏打ちされた指摘です。また、当会では記事公開にあたって、こうした情報の裏付けとなる証拠資料も継続的に収集・保管しており、指摘内容には十分な真実性があると考えております。
もっとも、司法の場においては、部分的に証明が難しい事実もあるかもしれません。しかしながら、仮に当会が一部について賠償責任を問われる結果となったとしても、この問題が法定の場で議論され、そしてそれによって問題の構造が社会の目に触れ、議論が促されるのであれば、それはむしろ本望です。
営業権の侵害について
一方、営業権の侵害については、優越的地位を利用して不公正な取引構造を構築しているのはむしろ相手方自身であるというのが当会の見解です。当会では、これまでも繰り返し「フリーランス保護新法」や「下請法」の観点から、産業医という専門職が中間業者によって不当に扱われている実態を指摘してきました。また、依頼者となる企業は多くが従業員数50~150人程度の小規模な事業所であり、依頼企業に対しても優越的地位をもって不適切な契約を結んできたであろうことは当該記事で指摘した通りです。こうした不均衡な関係性が、本来であれば直接契約できるはずの医師と企業の間に不透明な搾取構造を生んでいるという点を、見過ごしてはなりません。したがって、相手方が「営業権の侵害」を理由に名乗りを挙げること自体、法を逆手に取った不当な圧力行使であり、売上高200億円の巨大企業から個人医師や小規模零細企業への言論封殺であり、いわゆるスラップ訴訟であると受け止めています。
補足:本件について、非専門家の方より「大企業から個人零細への言論封殺・スラップ訴訟とは意味不明」とのご意見をいただきましたが、その意見は「営業権の侵害」という主張の法的根拠が不正競争防止法にあるという前提知識をご存知ないことによる誤解と思われます。わかりやすく解説しますと、不正競争防止法は、公正な競争の確保を目的とする法律ですが、問題となっている記事は、相手方が企業としての優越的地位を利用して公正な競争を妨げている点を指摘・批判した内容です。すなわち、「営業権の侵害」を理由にそのような批判記事を訴訟の対象とすることは、不正競争の被害者に対し、逆に不正競争をしていると主張することになり、極めてナンセンスな話であり、これは法的主張というよりも、萎縮効果を狙った威圧的な行為、すなわち「脅し」であるということなのです。配慮不十分にて説明不足となりましたことをお詫び申し上げます。今後とも、だれにでも読めてためになる記事を皆様に届けられますよう努めてまいります。
当該記事が改善させたもの:エムスリーキャリア社のホームページ
さらに付言すると、当会が該当記事を公開した2025年6月28日よりも後の、2025年7月22日以降、本日8月6日までの間に、エムスリーキャリア社の公式ホームページ上において、「紹介」という文言が削除され、「提案」という表現に置き換わっていることを確認しています。
これは、仮にそれが直接的な対応であったと明言されていなかったとしても、当会の記事が少なからず影響を及ぼした結果であると明らかに推察されるものであるため、
つまり、当該記事の公開は
- 小規模企業や個人医師に対し錯誤を生み欺罔させるような表現が問題視され
- エムスリーキャリア側の姿勢に一定の変化を促した
という点で、すでに、公共性・公益性の観点から極めて重要な社会的意義を果たしたと考えております。
【before】
【after】
【選ばれて6,400件超】エムスリーキャリアの産業医サービス|選任サポート・月額3万円~6,400件超の導入実績。医師登録数No.1で全国どこでも産業医を紹介します。産業医の選任・交代時、衛生委員会立ち上げなどのサポートや周辺サービスも充実
(まとめ)私たちの立場と所感
私たちは、以下の名誉毀損成立の3要件について、公共の場にて堂々と議論されることは非常に社会的意義のあることだと考えております。
- 公共性:産業医制度は、国民の労働環境と健康に関わる重要な制度です。
- 公益目的:劣悪な制度設計や不透明な業務形態に対する指摘は、制度の改善につながる公益的な動きと確信しています。
- 真実性:当該記述には、当事者から直接得た契約実態や労務構造に基づく具体的な情報を含んでいます。
また、仮に一部について真実性の立証が難しく、当会が一部責任が問われたとしても、業界全体の透明化と健全化のためには必要な試練であると受け止めています。
今後の対応と社会的意義
このような開示請求が行われた以上、私たちは以下の対応を取る予定です。
- 労働者派遣法・労働安全衛生法・フリーランス新法などに基づき、関係公的機関への通報を実施
- 偽装請負の疑い、産業医制度の形骸化、適正報酬の問題などを法的に検証
- 引き続き、会員・非会員嘱託産業医および中小規模事業所を支援
これは単なる一企業の問題ではなく、「人の健康を守る」という産業医制度そのものの信頼性にも関わる重大なテーマです。
最後に:すべての嘱託産業医と労働者のために
私たちは、この問題が司法の場で取り上げられようとする動きがあったことに前向きな意義を感じています。
「沈黙が正義」ではなく、「声を上げ、議論し、制度をより良くすること」が正義であると信じています。
本件が、嘱託産業医制度に携わるすべての医師、そしてその恩恵を受けるすべての労働者にとって、より健全で持続可能な仕組みを生み出すきっかけとなることを願ってやみません。
以上、ご報告とさせていただきます。今後も情報が入り次第、追ってお伝えしてまいります。
日本嘱託産業医学会







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