日本嘱託産業医学会は日本学校医会と提携しました。


日本嘱託産業医学会と日本学校医会との提携について

日本嘱託産業医学会は、このたび 日本学校医会 と正式に提携いたしましたのでお知らせいたします。

日本学校医会
■ 日本学校医会とは 日本学校医会は、現在の学校医制度における課題を見直し、真に子どもたちの健康と命を守るために活動する全国の医師による専門団体です。既存の学校医制度は、しばしば「健診医」の役割にとど...

提携の背景

学校保健法第二十三条において、すべての学校には学校医を置く義務が定められています。
また、学校保健法施行規則第二十二条には、学校医の職務として以下のように多岐にわたる業務が規定されています。

  • 一 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること。
  • 二 学校の環境衛生の維持及び改善に関し、必要な指導及び助言を行うこと。
  • 三 健康相談に従事すること。
  • 四 保健指導に従事すること。
  • 五 健康診断に従事すること。
  • 六 疾病の予防処置に従事すること。
  • 七 感染症及び食中毒の予防に関する指導・助言・処置を行うこと。
  • 八 校長の求めにより救急処置に従事すること。
  • 九 教育委員会等の求めにより健康診断を行うこと。
  • 十 その他、学校における保健管理に関する専門的事項の指導に従事すること。

これらの業務は、単なる健診や形式的な健康診断にとどまらず、
教育現場における 健康・安全・メンタルヘルスの包括的管理 を担うものであり、
本来は教育現場の健康リスクを総合的にマネジメントする専門的立場にあります。

しかしながら、現実には学校医制度が十分に機能していない学校も多く、
「年に一度の健診医」としてのみ存在している例が少なくありません。
このような状況の中で、日本学校医会は「形だけの学校医」ではなく、
教育現場に信頼され、実質的な機能を果たす学校医の育成と支援 を理念に掲げて活動を展開しています。


提携の目的

日本嘱託産業医学会は、中規模事業所における産業医活動の支援を通じて、
職場環境における健康リスクの管理、メンタルヘルス支援、感染症対応、労働安全体制の整備などの水準向上に取り組んでまいりました。

ここで、学校医が担う「健康と安全の専門的管理」という使命は、
職場において従業員の健康を守る「産業医」の役割と本質的に共通しています。

この点に着目し、両会は相互の専門知見と経験を活かすことでシナジーを生み、
より質の高い学校保健・産業保健体制の構築を目指すことを目的としております。

今回の提携を通じ、次のような取り組みを推進してまいります。

1.ノウハウの共有

学校医と産業医はいずれも、
現場の健康管理・衛生管理・メンタルヘルス・感染症対策など、幅広い領域に携わっています。
本提携により、これまで産業保健の分野で培われてきた
「職場環境リスクアセスメント」「健康管理体制構築」「メンタルヘルス一次予防」などの実践ノウハウを、
学校現場にも応用できるよう体系的に共有いたします。

また、学校保健分野での感染症対策や児童生徒支援の知見を、
産業医活動にフィードバックし、双方向の情報交換を進めます。

2.人材の共有・相互交流

学校医と産業医は、求められる知識・倫理・判断力の多くを共有しています。
本提携により、両会所属の医師が互いの分野での活動機会を得られるよう、
人材の相互派遣・兼務支援を進めます。

これにより、学校においては「産業医的な視点を持つ学校医」の育成を、
企業や教育機関では「学校保健の感覚を理解した産業医」の育成を目指します。

また、若手医師に対する研修プログラムの連携を通じて、
教育現場と労働現場の両方で活動できる総合的な公衆衛生医の育成にも取り組みます。

3.認定制度・専門医制度の協同

学校医・産業医の社会的役割を明確化し、専門職としての地位を高めるため、
両会は 認定制度・専門医制度の運営協力を進めてまいります。

これにより、両分野に共通する基礎教育・倫理・実務スキルを整理し、
教育・産業・地域保健に横断的に関わる医師の新たな専門領域の創設を視野に入れています。

今後は、共通カリキュラムの策定、認定要件の調整、連携研修会の開催などを段階的に行い、
日本全体の学校保健・産業保健の水準向上を図ります。


今後の展望

本提携により、学校保健と産業保健という二つの分野が連携し、
教育現場における健康と安全の向上を図る新たな枠組みが生まれます。

日本嘱託産業医学会は、今後も学校医・産業医双方の専門性を高め、
「すべての子どもが安心して学び、すべての教師が安全に働ける学校づくり」に寄与してまいります。


令和7年(2025年)10月
日本嘱託産業医学会

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