電子申請でできる安全衛生関係の届出一覧

安全衛生関係の届出を紙から電子申請へ移すときに、どの手続を優先して確認すべきかを整理します。

労働安全衛生関係の届出は、すでに多くが電子申請の対象です。特に2025年1月1日からは、労働者死傷病報告、各種選任報告、健康診断結果報告など、一部の主要手続について電子申請が原則になりました。この記事では、2026年5月29日時点で確認できる公式情報をもとに、事業場が実務で見るべき手続をまとめます。

厚生労働省によると、電子申請を利用すると、労働局・労働基準監督署へ来庁せずに手続きすることができます。(出典:厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」)”であるとしています。来署しない便利さだけでなく、到達番号、控え、添付資料を残しやすい点も、事業場のコンプライアンス管理では重要です。

まず押さえる結論

安全衛生関係の電子申請は、すべてを一つの画面で覚えるより、三つに分けると管理しやすくなります。第一に、2025年1月1日から電子申請が原則になった主要手続。第二に、厚生労働省の入力支援サービスで帳票作成や電子申請ができる手続。第三に、e-Gov電子申請で個別に検索して提出する手続です。

厚生労働省のリーフレットによると、2025年1月1日より、電子申請が原則義務化されます。(出典:厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」)”であるとしています。対象は安全衛生関係の全手続ではなく、一部の主要手続です。迷った場合は、厚生労働省ページの最新リンクとe-Gov電子申請の手続検索で確認してください。

2025年1月1日から原則電子申請の主要手続

事業場で最初に点検したいのは、以下の手続です。50人以上の事業場、化学物質・有機溶剤・じん肺などの特殊健康診断がある事業場、労働災害報告が発生し得る現場では、電子申請担当者と控えの保存場所を先に決めておきます。

手続主な発生場面実務上の注意点
労働者死傷病報告労働災害等で死亡または休業が発生したとき4日以上と4日未満で報告時期と様式の扱いが変わる
総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告一定規模に達した事業場で法定管理者を選任したとき法人単位ではなく事業場単位で、選任日と前任者情報を確認する
定期健康診断結果報告常時50人以上の事業場で定期健康診断を行ったとき健診機関名、受診者数、有所見者数、産業医情報を健診後に早めにそろえる
心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告常時50人以上の事業場でストレスチェックを実施したとき個人結果ではなく、実施状況や面接指導人数など報告用の集計情報を扱う
有害な業務に係る歯科健康診断結果報告酸など歯または支持組織に有害な業務があるとき対象業務、受診者数、異常所見の集計を事業場で管理する
有機溶剤等健康診断結果報告有機溶剤業務があり、特殊健康診断を実施したとき作業環境管理・作業管理の資料と健診結果報告を分けて保存する
じん肺健康管理実施状況報告粉じん作業等に関するじん肺管理があるとき対象者、管理区分、実施状況の更新漏れを避ける

厚生労働省のリーフレットによると、原則電子申請の対象として、労働者死傷病報告。(出典:厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」)”を挙げています。同じリーフレットでは、定期健康診断結果報告。(出典:厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」)”も対象に含めています。

産業医関連では、同リーフレットが、産業医の選任報告。(出典:厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」)”を対象手続として示しています。50人以上になった事業場、産業医を交代した事業場、前任者の退任情報がある事業場では、電子申請の控えを産業医契約書や委嘱状と一緒に保存すると後日の確認がしやすくなります。

産業医選任報告の書き方: 提出先、期限、添付書類

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入力支援サービスで扱える主な帳票

安全衛生関係では、厚生労働省が「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を用意しています。定期健康診断結果報告、選任報告、労働者死傷病報告、ストレスチェック結果報告など、事業場で頻度の高い手続はこのサービスから確認すると実務に入りやすいです。

厚生労働省の入力支援サービスによると、入力した情報により、e-Govを介して直接電子申請することができます。(出典:厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」)”であるとしています。帳票を印刷するだけでなく、電子申請につなげられる点がポイントです。

同サービスによると、電子申請の利用には、e-Govアカウント、GビズID、またはMicrosoftアカウント。(出典:厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」)”が必要です。担当者個人のアカウントに依存すると、異動・退職時に控えへアクセスできなくなることがあります。会社として、どのアカウントで誰が提出するかを決めておきます。

分類入力支援サービスで確認したい手続例産業医・事業場での確認ポイント
選任報告総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任報告常時使用する労働者数、業種、選任日、資格証明、前任者情報
健康診断定期健康診断結果報告、有機溶剤等健康診断結果報告、有害業務の歯科健康診断結果報告、じん肺健康管理実施状況報告個人票ではなく、監督署報告用の集計値と産業医情報を整理する
メンタルヘルス心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告ストレスチェックの個人結果を会社へ出す手続ではない点を誤解しない
労働災害労働者死傷病報告、附属寄宿舎内での災害報告発生日、休業見込、災害発生状況、略図、派遣・請負関係を確認する
化学物質新規化学物質製造・輸入届、少量新規化学物質の確認申請研究開発、輸入、委託製造の担当部署と安全衛生担当の連絡線を作る

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e-Govで個別検索する手続もある

入力支援サービスに表示される帳票だけで、労働安全衛生関係の電子申請をすべて把握できるわけではありません。厚生労働省ページには「電子申請可能な手続き」の一覧ファイルがあり、e-Gov電子申請の手続検索へつながっています。足場や局所排気装置などの設置・移転・変更届、特定元方事業者の事業開始報告、特殊健康診断結果報告などは、事業の種類や作業内容に応じて個別確認が必要です。

厚生労働省によると、安全衛生関係の電子申請には、労働者死傷病報告。(出典:厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」)”や、健康診断結果報告。(出典:厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」)”が含まれます。同じページでは、足場や局所排気装置等の届出例にも触れています。

同リーフレットによると、原則義務化の対象以外にも、多くの届出等が電子申請可能です。(出典:厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」)”であるとしています。つまり、原則電子申請の対象かどうかと、電子申請が可能かどうかは分けて考える必要があります。

法令上も電子情報処理組織による報告が入っている

主要な報告義務では、労働安全衛生規則の条文上も、電子情報処理組織を使用して報告する形が入っています。ここを押さえると、電子申請を単なる任意の便利機能ではなく、法定報告の通常ルートとして扱いやすくなります。

労働安全衛生規則第13条によると、事業者が産業医を選任したときは、事業者は、産業医を選任したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、第十四条第二項各号に掲げる者であることにつき証明することができる電磁的記録等必要な電磁的記録を添えて、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第13条)”報告する仕組みになっています。報告先は、同条の文脈では所轄労働基準監督署長です。

労働安全衛生規則第52条によると、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断を行ったとき、常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断(第四十四条又は第四十五条の健康診断であつて定期のものに限る。以下この項において同じ。)を行つたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第52条)”する必要があります。健診個人票をそのまま出すのではなく、報告書に必要な集計値を作る点が実務上の違いです。

労働安全衛生規則第52条の21によると、ストレスチェックの結果等は、常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、電子情報処理組織を使用して、検査及び面接指導の結果等について、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第52条の21)”報告する枠組みです。個人のストレスチェック結果を会社へ共有する手続ではなく、実施状況等の法定報告として整理してください。

労働安全衛生規則第97条によると、労働者死傷病報告は、労働者が労働災害等により、事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒(以下「労働災害等」という。)により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第97条)”に問題になります。災害発生状況、略図、休業見込、派遣・請負関係を、事故直後から報告用に整理しておくことが重要です。

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事業場で作る電子申請台帳

電子申請への対応は、提出画面を操作できる人を一人置くだけでは足りません。監督署へ出した事実を後で示せるよう、電子申請台帳を作ることを勧めます。安全衛生担当、人事労務、産業医、健診機関、社労士が関わる場合でも、最後に会社として何を提出したかを追える形にします。

台帳項目記録する内容理由
事業場情報事業場名、所在地、電話番号、所轄労働基準監督署、労働保険番号法人本社ではなく、提出単位が事業場になることが多い
手続名e-Govや入力支援サービス上の正式な手続名似た名前の様式を選ぶ誤りを防ぐ
発生日・対象期間選任日、健診実施日、ストレスチェック実施年月、災害発生日、報告対象期間遅滞なく提出する手続と、定期提出の手続を分ける
提出情報入力値、添付資料、資格証明、健診集計、災害略図提出後の修正や問い合わせに備える
提出記録提出者、提出日、到達番号、受付結果、控えPDF、メール通知監督署確認や内部監査で提出事実を示す
関係者確認人事、安全衛生担当、産業医、健診機関、社労士の確認日集計値や資格資料の誤りを減らす

よくある失敗

失敗1:法人単位で考えてしまう。
安全衛生関係の選任・報告は、事業場単位で考えるものが多くあります。本社で一括管理する場合でも、支店、工場、店舗、営業所ごとに常時使用する労働者数、所轄監督署、産業医や衛生管理者の選任状況を分けてください。

失敗2:提出画面の控えだけを担当者の端末に置く。
電子申請は、到達番号や控えを残して初めて社内で追跡できます。担当者が異動した後も分かるよう、事業場別の共有フォルダや文書管理システムに、提出日、手続名、到達番号、添付資料、受付結果を保存します。

失敗3:健康情報を出しすぎる。
健康診断結果報告やストレスチェック結果等報告は、監督署へ出す法定報告です。労働者個人の詳細な診療情報やストレスチェック個人結果を、会社の誰でも見られる形で扱う必要はありません。産業医は、会社が必要最小限の集計情報で手続を進めるよう助言します。

失敗4:入力支援サービスとe-Govの役割を混同する。
入力支援サービスは、帳票作成や一部の電子申請を支援する入口です。e-Gov電子申請は、行政手続の検索と申請の入口です。どちらから入る手続かを台帳に書いておくと、次回提出時に迷いにくくなります。

産業医が確認しておきたいポイント

産業医は電子申請の提出者ではない場合が多いですが、選任報告、健康診断結果報告、ストレスチェック結果等報告には産業医名や所属情報が関わります。事業場が古い情報で提出しないよう、氏名、所属機関、医籍登録番号、産業医資格の確認資料、選任日、前任者情報を確認しておきます。

健康診断やストレスチェックでは、産業医が見るべき情報と、会社が監督署へ報告する情報を分けることが大切です。会社に必要なのは法定報告に必要な集計情報や産業医情報であり、労働者の診療詳細を広く社内共有することではありません。電子化によって情報がコピーされやすくなるため、保存先と閲覧権限も確認してください。

まとめ

安全衛生関係の電子申請は、労働者死傷病報告、選任報告、健康診断結果報告、ストレスチェック結果等報告など、事業場に身近な手続から優先して整えるのが現実的です。2025年1月1日から一部手続は原則電子申請になっており、厚生労働省の入力支援サービスとe-Gov電子申請を組み合わせて確認します。

事業場側では、電子申請の操作方法だけでなく、誰が、どのアカウントで、どの手続を、いつ提出し、どこに控えを残したかを管理する必要があります。産業医側は、選任情報、健診・ストレスチェックの報告範囲、健康情報の最小化を確認し、電子申請が安全衛生管理体制の実態とずれないよう支援してください。

参考資料