産業医面談で何を話せばよいか、どこまで会社に伝わるのかを知りたい方のためについて、確認したいポイントを整理します。
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産業医面談は、会社から呼ばれることも、自分から相談を申し込むこともあります。健康診断後、長時間労働、ストレスチェック、休職・復職、体調不良、職場環境の悩みなど、きっかけはさまざまです。
不安になりやすいのは、「全部話さなければならないのか」「話した内容が上司にそのまま伝わるのか」という点です。結論から言うと、産業医面談では、仕事と健康に関係する情報を中心に話せば十分です。診断名、治療歴、家庭の事情、職場への不満をすべて細かく話す必要はありません。ただし、安全に働くために必要な情報を隠すと、適切な就業配慮につながりにくくなります。
とはいえ、うつや適応障害などのメンタル疾患においては背景状況が病状を理解するための重要な手がかりとなることが少なくありません。できるだけ、労働者からもプライベートや人間関係、経歴などの情報まで提供した方が支援につながりやすい部分はあります。
産業医面談は何のために行うのか
産業医面談の目的は、治療そのものではなく、健康状態と仕事の関係を整理し、安全に働くために必要な配慮を考えることです。産業医は、主治医の代わりに診断や治療を進める医師ではなく、職場で働くことによる健康リスクを見て、会社に医学的意見を述べる立場です。
労働安全衛生法第13条によると、事業者は産業医に、”労働者の健康管理等を行わせなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第13条)”であるとしています。
労働安全衛生規則第14条によると、産業医の職務には、”法第十三条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。(略)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第14条)”が含まれるものであるとしています。
つまり、産業医面談は「会社の聞き取り」ではなく、「働き方と健康の調整」のための面談です。労働者は、自分の体調、仕事で困っていること、必要な配慮、会社に伝えてよい範囲を整理して話すと、面談を使いやすくなります。

産業保健スタッフには守秘義務が課せられており、労働者の申告した秘密は守られます。伝えて良い情報と伝えてはいけない情報を分別することが大事です。ただ、中には事業者寄りの産業保健スタッフもいます。

日本嘱託産業医学会は、産業医が中立の立場をちゃんと保ち、正しい支援と産業衛生水準の向上を実現するために、知識と実力を持つ嘱託産業医の育成に取り組んでいます。
#守秘義務
面談で話すとよいこと
産業医に伝えるとよいのは、診断名そのものよりも、「仕事にどう影響しているか」です。たとえば、眠れない、朝起きられない、集中が続かない、痛みで作業姿勢が保てない、薬の副作用で眠気がある、夜勤後に体調が戻らない、といった情報です。
- 体調の変化:睡眠、食欲、疲労、気分、痛み、めまい、動悸、集中力、記憶、服薬による眠気など。
- 仕事への影響:残業、夜勤、出張、運転、高所作業、重量物、対人対応、締切、在宅勤務で困っていること。
- 職場要因:業務量、上司や同僚との連携、休憩の取りにくさ、騒音、暑熱、ハラスメントが疑われる言動など。
- 受診状況:主治医の有無、通院頻度、次回受診日、診断書の有無、主治医から言われている就業上の注意点。
- 希望する配慮:残業制限、夜勤調整、短時間勤務、業務量調整、通院時間の確保、席や作業場所の変更など。
- 会社へ共有してよい範囲:診断名を出してよいか、上司へ伝える内容、伝えてほしくない内容、本人から先に説明したい内容。
長時間労働の面接指導では、法律上も心身の状況を把握することが予定されています。労働安全衛生法第66条の8によると、医師による面接指導は、”事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の8)”であるとしています。
したがって、面談では「残業が多いです」だけでなく、「残業後に眠れない」「休日も回復しない」「ミスが増えている」「通院時間が取れない」のように、労働時間と体調のつながりを伝えると、産業医が就業上の意見を作りやすくなります。
話さなくてもよいこと
産業医面談では、健康と仕事に関係しない私生活の詳細まで話す必要はありません。病名、過去の治療歴、家族関係、経済状況、交友関係などは、就業配慮に必要な範囲で十分です。
- 診断名の詳細:就業配慮に必要な場合を除き、病名を細かく説明しなくてもよい場面があります。
- 治療の全経過:薬の名前や治療内容は、眠気、運転制限、夜勤可否など仕事に影響する部分を中心に話せば足ります。
- 家庭や私生活の詳細:介護、育児、離婚、借金などは、勤務調整に関係する範囲に絞って伝えます。
- 職場への不満の全部:産業医は労務紛争の代理人ではありません。健康に影響している事実、頻度、業務上の困難に整理して話します。
- 人事判断の結論:異動、評価、懲戒、退職勧奨の適否そのものを産業医が決めるわけではありません。
ただし、「話さなくてよい」は「安全上重要なことを隠してよい」という意味ではありません。意識が飛ぶ可能性がある、薬で強い眠気がある、希死念慮がある、危険作業に支障がある、通勤や運転に不安がある、といった情報は、本人と周囲の安全に関わります。主治医、産業医、必要に応じて救急や相談窓口につなげてください。
とはいえ、特にメンタルヘルスにおいては、思いもよらぬ内容が疾患に関係している可能性があります。秘密を守ることが信頼できる支援者にはプライベートのことをしっかり話した方がより良い支援につながるかもしれません。
会社に伝わる情報、伝わらない情報
産業医面談で話した内容が、上司や人事にそのまま伝わるわけではありません。会社に共有されるべきなのは、原則として、就業上必要な範囲に整理された情報です。たとえば、「当面1か月は残業を月20時間以内にする」「夜勤を避ける」「重量物作業を控える」「通院のため月2回の時間確保が必要」といった内容です。
労働安全衛生法第104条によると、事業者は労働者の心身の状態に関する情報について、”事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第104条)”であるとしています。
また、労働安全衛生法第105条によると、健康診断や面接指導などの事務に従事した者は、”第六十五条の二第一項及び第六十六条第一項から第四項までの規定による健康診断、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項の規定による面接指導、第六十六条の十第一項の規定による検査又は同条第三項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第105条)”であるとしています。
厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によると、事業者は健康情報について、”個人情報を取り扱う者及びその権限、取り扱う情報の範囲。(出典:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」)”をあらかじめ取り決めることが望ましいものであるとしています。
面談の場で不安がある場合は、最初に「今日話した内容のうち、会社には何が伝わりますか」「診断名は伝える必要がありますか」「上司にはどの表現で伝わりますか」と確認してください。産業医側も、本人の理解を得ながら、就業上必要な情報に絞って意見化することが重要です。
産業医や心理職には高い倫理が求められます。
ストレスチェック面談では、同意と不利益取扱いを確認する
ストレスチェック後の面談では、個人結果の扱いに特に注意します。ストレスチェックの結果は、本人の同意なく会社へ提供されるものではありません。
労働安全衛生法第66条の10によると、ストレスチェック結果について、実施者は、”この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の10)”であるとしています。
同じく労働安全衛生法第66条の10によると、事業者は、労働者が面接指導を申し出たことを理由として、”この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の10)”であるとしています。
ただし、面談後に就業上の措置が必要と判断される場合、産業医は会社へ意見を出すことがあります。その際も、共有の中心は点数や回答内容そのものではなく、労働時間、業務量、休養、職場環境、就業配慮に関する情報です。
ストレスチェックは、事業者が実施そのものに関与しないよう規定があります。
→高ストレス者面接指導の流れと会社の対応:申出から就業上の措置まで
復職面談では、主治医情報と職場情報をつなぐ
休職後の復職面談では、「主治医が復職可能と書いたから即復職」でも、「会社が不安だから復職不可」でもなく、業務内容、勤務時間、通勤、再発予防、職場側の受け入れ体制を合わせて確認します。
厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」によると、職場復帰支援では、”本人を経由して主治医と連携し、職場復帰支援を進めていく手順。(出典:厚生労働省「職場復帰のガイダンス:職場との連絡、相談等」)”であるとしています。
復職面談では、主治医の診断書、生活リズム、通勤練習、日中の活動性、再発サイン、通院予定、職場で避けたい負荷、段階的復帰の希望を整理して伝えるとよいでしょう。産業医は、主治医の医学的判断と、会社の実際の業務条件をつなぐ役割を持ちます。
面談前に準備するとよいメモ
- 困っている症状を3つ以内に書く。例:眠れない、集中できない、腰痛で座っていられない。
- 仕事で困る場面を書く。例:夜勤明け、長時間会議、客先対応、重量物、通勤ラッシュ。
- いつから、どのくらい続いているかを書く。
- 通院中なら、主治医から言われている就業上の注意点を書く。
- 希望する配慮を書く。例:残業制限、出張延期、通院時間、席替え、業務量調整。
- 会社へ伝えてよい内容、伝えてほしくない内容を分けて書く。
- 最後に産業医へ聞きたい質問を1つか2つ書く。
産業医に聞いてよい質問
- この面談の結果は、会社の誰に、どの範囲で共有されますか。
- 診断名を会社に伝える必要がありますか。
- 就業上の意見書には、どのような表現で書かれますか。
- 主治医に確認したほうがよい内容はありますか。
- 残業、夜勤、出張、運転、危険作業について、どの程度なら可能と考えますか。
- 今後、体調が悪化したときは、誰に相談すればよいですか。
病歴や健診結果は慎重に扱われるべき情報
病歴や健康診断の結果は、一般的な勤務情報よりも慎重に扱うべき情報です。個人情報保護委員会によると、要配慮個人情報の例として、”病歴を含む情報、健康診断の結果を含む情報。(出典:個人情報保護委員会「『要配慮個人情報』とはどのようなものを指しますか」)”であるとしています。
そのため、労働者は「何でも会社に知られる」と思い込む必要はありません。一方で、会社が安全配慮や就業上の措置を検討するために、最低限の情報共有が必要になることはあります。大切なのは、診断書や面談内容を丸ごと共有することではなく、働くうえで必要な配慮に変換して共有することです。
→産業医に相談してよいこと一覧:体調、メンタル、職場環境、復職
まとめ:全部話すより、仕事に関係する情報を整理する
産業医面談では、病名や私生活をすべて話す必要はありません。中心にするのは、体調、仕事への影響、危険作業の有無、通院や服薬による制約、希望する就業配慮、会社へ伝えてよい範囲です。
産業医は、労働者の健康を守るために、医学的な立場から就業上の意見を出します。人事上の最終判断は会社が行いますが、その判断が適切になるためには、面談で必要な情報が整理されていることが重要です。不安があるときは、「どこまで会社に伝わるか」を面談の最初に確認してください。
出典・確認日
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3227&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省「職場復帰のガイダンス:職場との連絡、相談等」https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-worker/rw002/
- 個人情報保護委員会「『要配慮個人情報』とはどのようなものを指しますか」https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq4-q011
- 確認日:2026年5月29日

