嘱託産業医の業務委託は違法?人材派遣会社に産業医を頼むべきでない理由

2025.2.21追記

産業医業務委託契約の違法性について、法律専門家や厚生局関係者などと検討を重ねた結果、本記事で取り上げている事例以外にも法令違反の可能性があることが明らかになりました。とりわけ「偽装請負」については、当会において調査を進めるとともに、事案として取り扱う準備を進めております。

近年、大企業だけでなく、中規模事業所においても嘱託産業医の役割がますます重要視されています。産業医は、労働者の健康管理や職場環境の改善に貢献する専門家ですが、企業が産業医を選任する際にしばしば人材派遣会社による委託契約で、産業医に再委託することを前提としたものが結ばれています。この委託契約に関する法的問題点について詳しく見ていきましょう。

1. 産業医業務の委託契約とは?

企業(事業所)が産業医業務を外部の人材派遣会社に委託する場合、その契約は「委任契約」となります。この契約では、委託者(事業所)が受託者(人材派遣会社)に対して特定の業務の遂行を依頼します。ここで重要なのは、この契約が請負契約ではなく委任契約である理由です。

委任契約と請負契約の違い

  • 請負契約は、特定の成果物の完成を目的とする契約です。請負人(契約を受けた者)は、完成した成果物を提供する義務があり、結果に対して責任を負います。
  • 委任契約は、特定の法律行為について、事務処理や行為の遂行を目的とする契約です。受任者(契約を受けた者)は、委任者のために誠実に事務処理を行う義務があり、行為そのものに焦点を当てます。

産業医業務の性質

産業医の業務は、従業員の健康診断や健康管理、労働環境の改善指導などであり、特定の成果物の完成を目的とするものではありません。これらの業務は、継続的かつ専門的な知識と判断を必要とする「行為の遂行」を目的としています。そのため、産業医業務は、成果物を提供する請負契約ではなく、行為そのものを重視する委任契約が適しています。また、産業医業務の特殊性として、事業所は産業医を選任し労基署に選任届を提出することを期待します。そのような点からも、産業医業務も委任契約とみなすことが適当です。実際、産業医業務は士業業務との類似性がよく指摘されますが、弁護士などの士業業務は委任契約とみなされます。

2. 委任契約における再委託の問題

委任契約では、受託者が自ら業務を遂行する「自己執行義務」を持ちます。つまり、受託者が他の第三者にその業務を再委託することは基本的に禁止されています。しかし、現実には、人材派遣会社がその業務をさらに産業医(再受託者)に再委託するケースが見受けられます。

法的リスク

ここで問題となるのが、再委託の合法性です。人材派遣会社は、受任者として「自己執行義務」を持っているにもかかわらず、産業医業務を適切に遂行する能力がなく、産業医として選任されることもできない。それを分かっていながら、業務を受託し再委託する行為は、民法第644条に規定される「善管注意義務」に反する可能性があります。これにより、トラブルが発生し賠償責任や行政処分などが生じた場合、責任の所在が曖昧となり、委託者である事業所にとっても法的責任は避けられないでしょう。なぜなら、原則として禁止されている再委任を可能にするのは、委託者の同意であるためです。人材派遣会社の言うがままに再委任に同意をしてしまうと、知らぬ間に違法行為に関与していることになりかねません。

3.企業が考慮すべきポイント

企業が産業医業務を委託する際には、以下の点を考慮することが重要です:

  • 産業医との直接契約: 産業医業務は、資格を持った産業医に直接依頼することが原則です。知り合いの医師や、医師会などに依頼をしましょう。人材派遣会社に依頼するとしても、仲介にとどめるべきでしょう。
  • 受託法人の能力確認: 受託者が法人であっても、産業医事務所のような産業医業務を遂行する能力のある法人もあります。受託する法人が産業医業務を適切に遂行できるかどうかを事前に確認しましょう。
  • 法的リスクの認識: 委任契約の再委任は原則として民法で禁止されており、安易に認めないことが大切です。やむを得ず再委任を行う場合、その委託形態や責任の所在を明確にしましょう。

4. まとめ

産業医業務の委託と再委託に関する法的問題は、企業が法規を守るために無視できない重要な課題です。特に、人材派遣会社に産業医業務を委託する際には、民法上の義務に違反しないよう細心の注意を払わないと、知らぬ間にリスクに巻き込まれることになる可能性があります。企業は、委託契約の締結にあたって、法的リスクを十分に認識し、適切な対策を講じることが必要です。

コメント

  1. T.S. より:

    AR社から委託された嘱託産業医を某会社で行いましたが、まったく産業医活動に理解のない会社で、基本的な問題点や方法等につき会社側に教えるようagent側に何度も連絡しましたが、7回に1回しかつながらず無視され続けました。やっとagent側も重い腰をあげ、会社側に教示したようですが、会社側は400人の社員の就業判定を丸投げ、あまりの対応の悪さに会社側に誠実な対応をするようにメールしました。一番悪質なのは、何もしないagent、そして安く2時間で終わらない仕事を押し付ける会社と考えます。産業医活動について様々な法律はあるようですが、罰則はないのでしょうか?

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